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2018/12/10 06:23 |
未定
勘助は不思議な男であった。
男でありながら炊事洗濯針仕事をこなしなおかつ自営業とはいえ自分の足で外を歩き回っては金策をしてくる。人当たりの良い性格の優男で、話をしていて気持ちが好いとご近所から取引先まで口を揃えて言うのである。
しかし嫁の立場を奪わんばかりになんでもできる勘助である、生娘たちは自分よりも家事が得意である男に対し、尊敬の念はもてど嫁にいく勇気は無いと尻込みしてしまった。
嫁が居れば勘助も自ら家事を行うこともないのであろうが、それで済まぬ理由があった。端的に言えば、気を遣いすぎるのである。
勘助は昔に一度嫁を娶った。器量良しで勘助に負けじ劣らじの器用な娘であった。
生来女形無しと言われて来た勘助である、この女を逃せば今後一生妻を得ることは無いかもしれぬ。
勘助はとにもかくにも女の負担を減らすよう尽力した。
冬に手が冷たいと言えば進んで炊事を変わってやった、春に布団が重くて干すのが大変だと言えばまとめて洗濯をしてやった。
夏に暑さで食欲が出ぬと言えば夏ばてに効く物を片っ端から調べ上げ三食拵えてやり、秋に栗が美味しい季節ですねと一言こぼせば、翌朝早くから出かけ夜には山ほどの栗をもって帰って来た。
外から見ればとても嫁思いな旦那であっただろう、勘助自身家事も洗濯も苦ではなく、更に妻の為であるという名目があったためとても気分の好い日々であった。
しかし、妻としては複雑な心境であった。
少しばかり苦言をこぼせば全て夫が代わると言いやってしまうのである、自分がわざとしかけて楽をしているような気持ちであった。
もちろん妻にそのつもりはなく、ただ世間話としてこぼしただけに過ぎぬのであるが、勘助には助けを求めているように聞こえた。
夫婦仲は円満であった、しかし次第に女達の嫉妬や侮蔑を込めた井戸端会議の話題にのぼるようになりとうとう妻が限界を迎えた。
もうこれ以上は惨めになるだけだからと請うのである。
妻のためにしてきたことが妻を追い詰める結果となっては引き止める訳にもいかぬと勘助はそれを受け入れた。
晴れて独り身に戻った勘助はもうあれほどの器量良しとは暮らせぬだろうと区切りをつけ、住み慣れた村から少し離れた山の麓に住処を移し余生を一人で過ごすことに決めた。
「妻の立場を奪ってしまうような男は独り身が似合いじゃあ」
というのは村から出るのを惜しむ言葉をかけた村人と、器用すぎた自身へ些細な皮肉を込めた勘助の言葉である。







全部書けたらまとめて「小説家になろう」に投稿予定

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2012/02/16 19:16 | Comments(0) | 書きなぐった

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