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2018/02/26 10:46 |
じつはつづいています
ー声が聞こえる。
きんきんと頭に響く、子供の声だ。
深くに落ち込んでいた意識を引っ張り上げられて、重く閉じられていた瞼をうっすらとあげた。
子供が不安そうな顔で覗き込んでいる。

意識が明瞭になっていくにつれ、痛みや空腹が強くなっていくのがわかった。
子供の声が痛みに強く響く。
文句でも言ってやろうと動こうとするが、痛みとだるさがそれを邪魔をした。
眉間に皺を寄せ、諦めてもう一度眠ろうとすると、不意にひょいと体が浮いた。
そのまま何か暖かいものに包まれる。
視界にはわらじを履いた肉付きの良い足が写っていて、それが交互にせわしなく動いている。
「なんちゃーがやない、はやちっくとでつくから、頑張れ」
頭上から聞こえた声を最後に、すっと意識は溶けていった。

 妖は暗く湿った洞穴で目を覚ました。洞穴入口周辺には獣の骨が散らばっている。二本の尾は体に沿そってたたまれており、その先に鬼火は無い。前足をたたんでその上に乗せていた顎をあげて、妖はゆっくりとした動作で立ち上がった。
妖は洞穴の入口を隠す木々をぬってたどり着いた川で水を数口飲むと、空を見上げた。太陽と入れ替わり満月が静かに佇んでいる。妖はついと目を細めた。
祓い師との戦いから数日が立っている。力もあの時のそれよりも十分に回復した。これなら奴と戦うことになっても負けることはないだろう。そしてまた僧とまみえる時には、勘助が必ずそばにいるだろう。
あの人は優しい。怪我をした得体の知れない生き物すらも拾って手当するように。
妖は己の正体がばれたとしても、勘助は変わらず笑って受け入れるのだろうという妙な確信があった。それは実におかしな話なのだが、妖はそれを的確に示す言葉を持っていなかった。ただそれは心地よく、心の底を温めているのだ。そしてそれは不安も作り出す。
  妖は忘れていたのだ。本来自分が人間と関わるべきではないことを。
成り行きとはいえ勘助と生活を共にし、平穏というものに触れたが故に、忘れていた。妖は人あらざる者であり、近づきすぎれば人は死ぬのだと。
勘助が倒れてそれを思い出さぬ訳はなかった。
しかし妖は離れられなかったのだ。理由はわからない。ただ離れれば勘助は助かるはずだったのに、離れたら死んでしまうような気がして、離れられなかった。
できれば、勘助の前で争いはしたくない。あの男には平穏が似合う、そして争いは似合わないからだ。おそらく僧は勘助のそばに今もいるのだろう。根掘り葉掘り勘助から自分のことを聞き出して、あわよくば自分を呼び寄せる餌に使うつも何かもしれない。同じ人間同士あまり非道な事はしないだろうが、どちらにせよ戦いに巻き込むことは避けられない。
それは僧との戦いも同じだ。妖は僧とは面識がないが、あちらは相当な執念があることが感じられた。
勘助は争いの似合わない男だ。だからこそ、その場面で何をするのかが予測がつかない。それが、妖を一番不安にさせた。



短め。

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2014/09/13 19:26 | Comments(0) | 書きなぐった

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