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2018/12/10 06:45 |
つづき
少女が勘助のもとで暮らし始めて2週間ほどたとうとしていた。
その間、実に平穏だった。
男と住むのは良くないと村の女達が自分たちの所へ住むよう誘うこともあったが、それも断り少女は勘助の元に留まっている。
少女は勘助と比べ、家事などはできなかったが、手先は器用で針仕事が良く出来た。
無地の色布に誂《あつら》えた刺繍は、時折訪れる旅人の目にもとまり日銭へと変わるほどの物であった。
 少女はこの2週間で順調に力を取り戻している。
体重も増え、畑仕事も手伝える程になった。
もう1週間ほどすれば奉公にでもどこでも行けるだろうと勘助は考えていた。
村で適当な仕事をもらうこともできるだろうとも。
気がかりなのは少女が外出を好まないことであった。
畑仕事など家周りには出るのだがいざ村へ連れてゆこうと誘っても首を縦にふらぬのである。
体力的に辛いのかと考えていたがどうもそうではないらしい。
何度誘っても少女は首を振るばかりで、理由を聞いてもうまく濁されてしまう。
無理強いするわけにもいかぬし、少女が家に居る事について期限を設けたわけでもないので勘助はそっとしておくことにしていた。
 一方勘助は、少しばかり調子を狂わせていた。
はじめは風邪と思い村医者へ通っていたが、どうにも長引いている。
幸いにも少女が元気を取り戻し畑仕事はこなしてくれるので、それなりに楽が出来ていた。
日に日に病状は悪化していき、今では頭痛でろくに眠れず、体が重くて仕方がない毎日である。
畑仕事などろくにできぬ状態で全て少女に任せきりで、ついには家事もできなくなり床に伏せっきりになったのが昨日の事。
そして、今日も少女は裏腹に元気であり、甲斐甲斐しく勘助の世話を焼いていた。
 またあの来客が訪れたのはこの時である。
以前と同じ様に戸は叩かれた。
最初は一定の感覚でゆっくりと、次第に焦れたのか音が大きく荒々しくなる。
少女も以前と同じように息を潜める。
以前と違うのは勘助であった。
今まで閉じていた重いまぶたを上げ、痛む頭に響く音の方へと視線を動かした。
「なんじゃ、えらく騒々しい客ぜよ…すまんが、客の相手してくれんか」
重い腕をあげて戸をさし勘助は少女を見つめた。
少女は迷っている様子で、勘助と戸の間で視線を何ども往復させると意を決し腰をあげた。
いやにゆっくりと移動した少女が戸に手を伸ばす。
その手が届く前に戸は開かれた。
がたんと激しい音と共に現れたのは件の僧であった。
「隠しだてとは、よろしくありませんな」
僧は床に伏せる勘助にむかって言った。
時は夕方にさしかかろうとする刻。
傾いた日差しはまだ強く、僧を後ろから照らして顔に影を落とす。
その影から二つの双眸が鋭く光り勘助をまた射抜いていた。
「またお前さんかえ。隠しだてちゃあ何のことやか…」
勘助はひどい頭痛に皺を寄せながら声を搾り出した。
「数珠ですよ。ほら、そこのが持っているではありませんか」
僧は少女を一瞥する。
少女は飛び退った。手に数珠を握り締め、部屋の隅へ。
「ほがな数珠持っちゅうたがかえ、信心深い娘さんじゃの…」
勘助は力ない笑みを顔に貼り付け言う。あくまでも知らなかったというように。
額には汗が滲んだ。
僧は、無遠慮に小屋に上がり込み、勘助の枕元へ膝をついた。
勘助を覗き込む。
「あまり庇い立てするものではない。こんなに衰弱して、まだあれをそばに置くのか」
「さっきから、何をゆうてる…」
先ほどから、会話が噛み合っていない気がする。
だって、それそれじゃあまるで。
「単刀直入に言おう。あれが貴方の生気を吸ったのです」
勘助は朦朧とした意識の中必死に言葉の意味を探った。
思考がうまくめぐらない。
「あれは貴方の言うようなか弱い少女ではない」
まとまらぬ思考をよそに言葉は耳に飛び込んでくる。
何を言っているんだ、生気を吸うだなどできるわけがない。
だってあの子はただの子供じゃないか。
どこからからどう見ても、人間の…
「人に仇なす妖怪だ」
僧の言葉が導き出そうとした答えをかき消した。



ようやくここまでたどり着きました。
場面転換やセリフ回しを上手にできるようになりたい。

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2012/04/16 05:16 | Comments(0) | 書きなぐった

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