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2018/12/10 07:13 |
つっづっき
今、なんと。
勘助の頭は真っ白だった。
それもその筈、妖怪だなど勘助にとっておとぎ話の中のものでしかない。
それなのに、突然己が助けた少女がそれだなどと言われても信じられないだろう。
簡単に納得できる事実ではない。
「信じられぬだろうが、私はこの場で偽りを伝えてからかうような性質《たち》ではない。あなたもそれ位はわかるだろう」
呆然とする勘助にそう言って僧は立ち上がる
その目は部屋の隅で事の成り行きを見ている少女へと向けられた。
少女は立ち膝に両手をつき、僧を睨んでいる。
汗が頬を伝って床へと落ちる。
「うまく取り入ったようだな」
僧の言葉は勘助に向けたそれよりも剣呑さを帯びていた。
少女は言葉を返さない。
構わず僧は続けた。
「聞いた話では、熊に襲われているところをこの男に助けられたそうじゃないか。恩を仇で返すのが妖流の礼の仕方か?」
言葉を受け少女が立つ。
その顔には不敵な笑みを浮かべ、はっと一つ言葉を飛ばした。
「恩などあるものか」
その声はおよそ人の出す声とは思えなかった。
子供や老人男女の声が混ざった気味の悪い声が、人間の少女から出ていた。
その声に端を発した様に場の空気が変わる。
ぴんと細い糸のように張り詰め続けていた空気は途端にぐにゃりと歪みベッタリとまとわりつく様な物へと変わっていった。
「それが今日まで生きてこれたのは私のおかげ、熊を追っ払ってやったのも私。私にはその男に対する恩などありはしない」
気味の悪い声で少女が話す。
勘助は重い体にまとわりつく様な空気で息苦しさを覚えながら、少女の言葉を必死に聞いていた。
「所詮妖か。恩があろうとなかろうと私のすることは変わらないがな」
あざ笑うように言うと、僧は右手で手刀を作り胸の前で合掌するように構えた。口中で何かを唱えはじめる。
それに気づいた少女は、体から青い炎を発し、瞬く間に妖の姿へと変わった。
僧と少女の間にいた勘助は、重い体を引きずり布団からはい出て、誰もいない壁際へと動いた。
今にも落ちそうな意識の中、少女の真の姿を見た。
それは橙の体に足と鼻先が白く、その大きな体は一丈(約3m)ほどであると見える。
一見すれば大きな狐だが、尾は2本生えており、一本は狐同様の太い尾で、もう一本は猫のような細長く黒い尾である。双方とも尾先は白く、その先には青い火の玉が浮かんでいる。
少女の面影はまるでなく、そこにいるのは紛れもなく異形のものだった。勘助はゆっくりと座り込み気を失った。
 僧が唱え終わる前に、少女だった妖が尾を振り尾先の炎を自分の体にまとうとたちまち小屋に燃え移り、火の海となった。僧は唱えるのを止め、気を失った勘助の襟首をつかみ小屋の外へと転がり出る。
体制を立て直す前に青い火球が扇形に飛んでくる、火球のあいだをぬってそれをかわすと、
間もなく再び火球が襲い来る、僧はそれらを勘助を連れてなんとかかわして行くが、あっという間に火があたりを囲ってしまった。
「ちっ出てこないつもりか」
妖の姿は未だ小屋の中、小屋は轟々と青い炎で包まれており、みしみしと軋む音が鳴っている。さらに小屋を包む青い炎のせいで妖の攻撃を予測するのが困難であった。
僧は攻撃の合間に小さな結界を作りそこへ勘助を放り込むと、小屋の方を向き、手刀を胸の前に構える。
「オン・ハンドマダラ・アボギャジャヤニ・ソロソロ・ソワカ!」
僧がしゃんと地ををつき、手刀を横薙ぎにはらうと、弧をえがいた大きな衝撃波が飛ばされた。小屋はそれによって倒れかけていた柱がなぎ倒され屋根が落ちた。
「でてこないなら、小屋ごとやるだけだ」
僧は砂塵を睨みながら言った。
刻は、星が見え始める頃合になっていた。暗闇と静寂があたりを包む中、僧と勘助の小屋だけが青々と燃えていた。
小屋に対してあの体躯であれば衝撃波は避けきるのはむつかしいだろう。外していたとしても、屋根の下敷きとなれば無傷とはいかないだろう。
僧は妖が次の手を打つのを構えていた。
しかし全く次の動きが見えない。おかしい。
僧は小屋へと近づき、収まりつつある砂塵と瓦礫の山へ目を凝らした。じきに砂塵はなくなり、視界が晴れる。
「くそっやられた」
そこに妖の姿はどこにもなかった。




真言はウィキから持ってきました。
四足妖はわたくしのロマンなのです。

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2013/01/23 04:17 | Comments(0) | 書きなぐった

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